はじめまして、つかはら弦楽器工房です

東戸塚の自宅の一室で、ヴァイオリンを作っています。

以前には、都内の弦楽器店でお客様の楽器やお店で販売する楽器の修理や調整をしていました。

長年お客様とお話しして、音の調整をさせて頂くなかで気づいたことがあります。

楽器を弾く人が音に求めるイメージは人それぞれ、特にプロの方々は様々な音のイメージを持っています。音の出しやすさ、良く鳴っている状態、明るい音が好き、豊かな音が良い、通る音にしてほしい・・・

いろいろな言葉の違いはあっても楽器がいちばん素直に鳴っている、倍音の豊富な状態に調整ができたときに、良くなった!満足した!と言っていただけるようなのです。

音の面だけでなく、駒の高さや指板の反りの深さなどをととのえることで驚くほど弾きやすく、表現の幅が広がることもあります。

工房とも呼べないくらいの、小さな作業場ですが、使う人と楽器によりそうことを一番に考えて、日々を重ねています。

塚原 陽子

おすすめの弦は?

私自身チェロを弾いていて、楽器の製作や修理をしていると、おすすめの弦はありますかと聞かれる機会も多いです。

最近は素材もいろいろ、値段も幅広く様々な弦が販売されていて皆さん迷ってしまうのだと思います。

ほとんどの弦は外側の巻線が金属ですが、芯の材質は大まかに、

スチール(金属)

ナイロン(人工の繊維)

ガット(牛や羊の腸)

の3種類に分けられます。

近年チェロでよく使われている弦はほとんどがスチール素材、ナイロンやガットを試してみたけれど音が小さい、何となくぱっとしない、かさかさした音で使うのをやめてしまったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

このかさかさした感じの音の原因は、倍音が鳴っていないから。

近年はテンションを高くすることや弦の素材を変えることで音量や音色を求める傾向が強いのですが、駒をきっちりと理にかなった形にすると倍音が増え、広がりのあるとても豊かな音になる場合があります。倍音が多いと表現できる幅も広がるようです。

(12色の絵の具と、48色の絵の具の違いのようなものでしょうか・・・)

ドスンとした重い音を出すのは難しいですが、テンションに頼らないので楽器にも弾く人にも負荷がが少なくなります。

チェロではめずらしいですが、ドミナントはとても弾きやすく、ガット弦ほどではありませんが倍音も出しやすいと思います。そして何よりお財布にも優しい、笑

次回は具体的にどのように駒を調整するのかご紹介したいと思います。

Tナットのメリット、デメリット

Tナットにするにはまず、指板をカットします。

弦やナットを外して、ギコギコ・・・

指板をカットしてしまうので、簡単にもとに戻すことはできません。

また、ネック側の弦長が短くなるため、ポジション位置を整えるため駒と魂柱の位置も少しネック側にずらす必要があります。楽器のバランスが変わるので、当然音にも変化があります。

これらのデメリットに対して、Tナットのメリットは、

・全体の弦長が短くなって弾きやすくなる。

ということに尽きるのですが、弦長が短くなれば弾くのが楽になりますし、故障も起こりにくくなってきます。力まずに弾ければ出せる音も変わってくるでしょう。

また、7/8サイズや小ぶりの楽器を探すよりも楽器の選択肢が大幅に広がりますし、今使っている楽器、気に入った音色の楽器を弾きやすいサイズにすることができます。

音の変化が不安な方や、弦長の変化でどのくらい弾きやすくなるのか体験してみたい方は試しに駒の位置だけ上にずらして様子をみてみるのも良い方法だと思います。

T(ティー)ナット

Tナットをご存知ですか?

チェロやビオラで稀に見かけるナットの形状です。

ナットというのはスクロールに近い側の弦を支える部分のことで、通常のナットは正面から見ると横長の長方形をしています。これがアルファベットのTの形をしているのが、Tナットと呼ばれるものです。

なぜこんな形にするかというと、、、弦長を短くするため。もともとネックが長く標準に合わせるために施されている場合もありますが、Tナットにすることで通常サイズのチェロを7/8サイズに近い状態にすることができます。

私も手が小さく、「広い形(全音を隣の指で取る)」が安定しなかったので、大学時代の先生にすすめられてこの方法で弦長を短くした楽器を使っていました。

メリット、デメリットの両方がある方法ですが、次回どのような作業をするのかも含めて詳しくお話してみようと思います。

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